10月のニュースレター

 

TVドラマ「ツインピークス」の序盤に特別捜査官のデール・クーパーは、ブルーベリーパイ一切れでも午後のうたた寝でもいいから毎日一つ自分にささやかなご褒美をあげるべきだと主張していますが、たとえば短編小説を読むというのは誰にとっても魅力的な選択肢でしょう。巧みに無駄をそぎ落とし、完成された物語ひとつひとつを露わにしていく現代作家、ジュンパ・ラヒリはいかがでしょう。彼女は自らの経験から、移民として2つの社会の狭間に生きる不安定な生活を掘り下げて描いています。またジュノ・ディアズも同じように自身が属するドミニカ移民コミュニティの間で使われているスペイン語交じりの英語、スパングリッシュを用いて執筆しており、 例えば「プラの信条」では、ふさわしくない恋人を選んだせいで、彼を溺愛する母親にさえ見捨てられてしまう語り手の兄が描かれています。ディアズは最近、エッセイや小説に集中するために短編小説はやめると発表しているからこそ、彼の数少ない短編を楽しんではいかがでしょう。反対に、50年以上も執筆活動を続け、著書も13作を数えるアリス・マンローの場合は作品の数という点では心配ありません。極めて重大な出来事も無駄のない簡潔な文章で伝える描写力に秀でており、息子の選択に戸惑いを覚えるもう一人の母親が登場する作品「深い穴」は彼女の力を表すいい例と言えるでしょう。つまるところ、短編小説は果物の盛り合わせのようなものです。熟しているものがあったり、一口で捨ててしまうものまであったりとさまざまですが、多くは目を奪われるほど魅力的で毎日欠かさずに取ることが望ましいところなどが共通しています。


 

訪問 東京の原美術館では、10月12日から12月23日まで、森村泰昌が自身の手により1994年に開催した衝撃の個展「レンブラントの部屋」展を再現します。
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文学 ヘンリー・ミラー記念図書館は、祖国アメリカに蔓延していた過度の消費社会や同調主義を嘆いていた作家ヘンリー・ミラーが、一時的に逃れるために移り住んだカリフォルニアのビッグ・サーの地にあります。
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演劇 いつも変わらず大胆不敵なアメリカン・レパートリー・シアターでは、ロバート・シェンカン脚本の演劇「All the Way」が10月12日まで上演されています。
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建築 リナ・ボ・バルジの名前は、彼女の祖国イタリアの多くの人々にとっては未だに馴染みがないでしょうが、彼女が建てた建築物や造った家具は、彼女が国籍を移したブラジルにおいて数えきれないほど多くの人々の暮らしを豊かにしています。
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映画 シドニーのサリーヒルズにあるゴールデン・エイジ・シネマ&バーは、細部に至るまでこだわって改修されたパラマウント映画社ビルの中にあり、映画鑑賞が特別な娯楽であり、映画館が映画を観る特別な場所であった頃に映画ファンを連れ戻してくれる場所です。
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風味 精製は往々にして賞賛に値し、完璧を求めるうえで欠かせないプロセスではあるものの、全粒穀物は、精製されたものよりも多少健康的で、味でも優る場合が多々あります。
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聴く あのレナード・コーエンとのデュエットで主役を脅かすことが出来る人はそういないでしょう。しかし、このエレガントな女性歌手、「比類なきシャロン・ロビンソン」は34年もの間、それをやってのけてきました。
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出席 メルボルン・フェスティバル(10月11日から10月27日まで)では、「ザ・ソマリア・ピース・バンド」が気の遠くなるような困難に立ち向かい、大陸を超え再び共に演奏するまでの探索の旅の記録が上演されます。
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写真:フーバーダムの給水塔の近接写真、アレキサンダー・エリック・プロイモス、2009年撮影

 

‘Slavery to monarchs and ministers, which the world will be long freeing itself from, and whose deadly grasp stops the progress of the human mind, is not yet abolished.’ Mary Wollstonecraft